1.財産分与とは「婚姻中に築いた財産を
原則2分の1ずつ分ける」こと
離婚による財産分与は、婚姻中に築いた財産を子どもの有無に関わらず、夫婦で原則2分の1ずつ分けることを意味します。
ただし、話し合いにより双方の合意があった場合や一方の貢献度が高く、2分の1ずつが公平ではないと判断された場合は割合が変わります。
財産分与の請求期間は離婚成立日から2年以内となるため、早めに対応しておくとよいでしょう。
離婚による財産分与の詳細については下記記事で解説しています。
2.離婚による財産分与の6つの流れ
離婚による財産分与の流れは下記の通りです。
- 財産分与の対象となる共有財産をリストアップする
- リストアップした財産の評価額を算出する
- 分配の割合・方法について話し合う
- 離婚協議書を作る
- 協議がまとまらない場合は調停・裁判を行う
- 不動産の名義変更を行う
それぞれ詳しく解説します。
2-1.財産分与の対象となる共有財産をリストアップする
財産分与を行うため、婚姻中に築いた共有財産のリストアップを行います。
財産分与の対象となる共有財産は下記の通りです。
財産分与の対象になる財産
- 現金
- 預貯金
- 家、土地などの不動産
- 保険金(生命保険、年金保険、学資保険等)
- 退職金
- 債務(住宅ローン等)
- 有価証券
- 自動車
- 家財道具など
それぞれ名義人が誰か、通帳や保険証券の写しを用意しておきます。
2-2.リストアップした財産の評価額を算出する
共有財産をリストアップした後は、財産の評価額を算出します。
不動産は、購入時の価格ではなく離婚時の価格で算出します。
<財産の評価額を算出した例>
※表は左右にスクロールして確認することができます。
夫が名義人の財産 | 補足事項 | 評価額 |
---|---|---|
現金(預貯金含む) | ○○銀行 ○○支店 | 残高 500万円 |
不動産 | ○○不動産と契約 | 不動産評価額 1,800万円 |
債務(住宅ローン) | ○○への支払い | 住宅ローン残高 800万円 |
財産合計 1,500万円 |
※表は左右にスクロールして確認することができます。
妻が名義人の財産 | 補足事項 | 評価額 |
---|---|---|
現金(預貯金含む) | ○○銀行 ○○支店 | 残高 300万円 |
自動車 | ○○自動車と契約 自動車ナンバー |
評価額 120万円 |
財産合計 420万円 |
2-3.分配の割合・方法について話し合う
リストアップした財産、評価額を元にどのように分配するか割合と方法について話し合います。
財産分与は原則として2分の1ずつ行われますが、話し合いにより双方の合意があった場合や一方の貢献度が高く、2分の1ずつが公平ではないと判断された場合は割合が変わります。
財産を分配する方法は、下記の3つです。
- 現金化して分配する
- 現物をそのまま分配する
- 夫婦どちらか一方が保持し、他方の持分に相当する金額を支払う
不動産を分配する場合、住宅ローンの有無により、財産分与の方法が異なります。
詳細は「離婚による不動産の財産分与の方法は「住宅ローンの有無で変わる」」をご覧ください。
2-4.離婚協議書を作る
財産の分配の割合・方法が決まった後は、離婚協議書を作成します。
離婚協議書とは、離婚における条件を取り決めるため作成する合意書です。
財産分与の他、親権や養育費、慰謝料なども記載します。離婚協議書を作ることで離婚後のトラブルを避けることができます。
2-5.協議がまとまらない場合は調停・裁判を行う
財産の分配の割合・方法が決まらない場合は、調停・裁判を行います。
調停は、当事者同士の話し合いによる解決を目標に、裁判所を介して話し合うことを差します。
離婚前・離婚後で調停の種類が異なります。
調停の時期 | 調停の種類 |
---|---|
離婚前 | 夫婦関係調整調停 |
離婚後 | 財産分与請求調停 |
離婚前の「夫婦関係調整調停」、離婚後の「財産分与調整調停」、どちらも財産分与について話し合うことができます。
2-6.不動産の名義変更を行う
不動産を財産分与で譲渡された場合、不動産の名義変更を行います。
名義変更を行わない場合、不動産の売買や担保としての登録ができなくなります。
そのため、法務局に所有権移転登記を申請し、登記による名義変更が必要となります。
住宅ローンが残っている不動産の名義変更をする際は、金融機関の承諾が必要になります。
名義変更に必要な費用は下記の通りです。
- 登録免許税
- 司法書士へ支払う報酬
3.離婚による不動産の財産分与の方法は
「住宅ローンの有無で変わる」
婚姻中に得た持ち家やマンション等を離婚によって財産分与する方法は、住宅ローンの有無で変わります。
3-1.住宅ローンが残っている場合
住宅ローンが残っている場合は、状況に応じて下記パターンを検討します。
- 不動産の査定額が住宅ローンの残高を上回るアンダーローンの場合:「売却し現金化」
- 不動産の査定額が住宅ローンの残高を下回るオーバーローンの場合:「売却後に自己資金で完済」
- 住宅ローンの名義人が住み続ける場合:「名義人が支払を続ける」
- 住宅ローンの名義人以外が住み続ける場合:「名義人に支払いを続けてもらう」
- 夫婦でペアローンを借りている場合:「ローンの一括返済や一本化が必要」
3-1-1.不動産の査定額が住宅ローンの残高を上回るアンダーローンの場合:「売却し現金化」
不動産の査定額が住宅ローンの残高を上回るアンダーローンの場合は、売却し現金化するのが最も簡単な方法です。
売却によって住宅ローンを払い終えた後、手元に残った現金を夫婦で分け合います。
アンダーローンで売却し現金化する例
【条件】
- 不動産査定額:1,500万円
- 住宅ローン残高:1,000万円
【計算式】
- 不動産査定額 1,500万円 - 住宅ローン残高 1,000万円 = 現金 500万円
- 現金500万円 × 1/2 = 夫婦ひとりあたり 250万円
3-1-2.不動産の査定額が住宅ローンの残高を下回るオーバーローンの場合:「売却後に自己資金で完済」
不動産の査定額が住宅ローンの残高を下回るオーバーローンの場合は、売却後に自己資金で残りの住宅ローンを完済します。
オーバーローンになる例
【条件】
- 不動産査定額:1,800万円
- 住宅ローン残高:2,000万円
【計算式】
- 不動産査定額 1,800万円 - 住宅ローン残高 2,000万円 = 現金 -200万円
オーバーローンの場合では、任意売却での売却も可能です。
任意売却とは、売却後も住宅ローンが残ってしまう場合に金融機関の合意を得て売却する方法です。
本来、住宅ローンの完済をもって抵当権が抹消されますが、任意売却を行うことで完済できない場合でも抵当権が解除されます。
ただし、住宅ローンの返済ができない場合は信用情報に関わるため、今後金融機関からの借り入れが難しくなるケースがあります。
※任売却ができないケースもあります。
3-1-3.住宅ローンの名義人が住み続ける場合:「名義人が支払を続ける」
住宅ローンの名義人が住み続ける場合は、そのまま名義人が支払いを続けます。
名義人ではない人は住宅ローンを支払う必要はありません。
連帯保証人になっている場合は、名義人の支払が滞った場合に支払い義務が生じます。
離婚をしただけでは連帯保証人を外れることはできません。
連帯保証人から外れるには、借り入れを行っている金融機関の許諾が必要になります。
外れる方法は下記の3つです。
連帯保証人から外れる方法
- 連帯保証人の変更
- 他の担保を差し入れる
- 不動産の売却を行う
3-1-4.住宅ローンの名義人以外が住み続ける場合:「名義人に支払いを続けてもらう」
住宅ローンの名義人以外が住み続ける場合は、離婚後も名義人と連絡を取れる状態を確保した上で、名義人に支払いを続けてもらう必要があります。
この場合、名義人が住宅ローンの返済を滞ると、住宅を追い出されてしまうリスクも生じます。
そのため、きちんと名義人と連絡が取れる状態を確保しておくことが重要です。
3-1-5.夫婦でペアローンを借りている場合:「ローンの一括返済や一本化が必要」
夫婦でペアローンを借りている場合は、ローンの一括返済や一本化が必要になります。
ペアローンは夫婦で住宅ローンを返済していくものとなるため、離婚後も支払を継続していきます。
お互いが連帯保証人という性質を持つため、片方の支払いが滞った場合は、ふたり分のローン返済が必要になります。
離婚後のトラブルを避けるため、離婚時にローンの一括返済を行うか、収入に余裕のあるほうが相手方のローンを買い取り一本化するなどの対応をします。
3-2.住宅ローンが残っていない場合
住宅ローンが残っていない場合は、下記の2パターンを検討します。
- 不動産売却で得た金額を「2分の1ずつ分ける」
- どちらか一方が住み続ける場合「他方の持分に相当する金額を支払う」
3-2-1.不動産売却で得た金額を「2分の1ずつ分ける」
不動産を売却し、現金で分け合う方法です。
不動産売却にかかる手数料などの費用を除き、手元に残った金額を夫婦で分け合います。
家の売却でかかる費用は主に下記の通りです。
不動産売却にかかる費用
- 仲介手数料:不動産会社に支払う手数料
- 印紙税:売買契約書に貼付する収入印紙代
- 所有権移転登記費用:登録免許税や司法書士への報酬
- 印鑑証明書の費用:契約書に押印する印鑑の証明をする書類の費用
3-2-2.どちらか一方が住み続ける場合「他方の持分に相当する金額を支払う」
夫婦どちらか一方が不動産を取得し、取得しなかった相手へ代償金を支払います。
不動産の半分の価値に相当する代償金を相手に支払うことで、公平な財産分与を行うことができます。
また、不動産の名義がどちらか一方の名義となるため、賃貸にした場合の管理や売却時の処分方法で相手方とのトラブルのリスクを下げることができます。
4.離婚による不動産の財産分与で必要な書類と入手先
離婚による不動産の財産分与で必要な書類と入手先は下記の通りです。
【不動産の財産分与で必要な書類】
財産分与する側が準備する書類 |
|
---|---|
財産分与される側が準備する書類 |
|
その他準備する書類 |
|
【不動産の財産分与で必要な書類の入手先(一部)】
※表は左右にスクロールして確認することができます。
法務局 | 役所 | オンライン・郵送 | コンビニの マルチコピー機 |
|
---|---|---|---|---|
登記原因証明情報 | ○(閲覧のみ) | × | × | × |
印鑑証明書 | △(法人は可能) | ○ | ○ | ○ |
固定資産評価証明書 | × | ○ | ○(郵送) | ○ |
住民票 | × | ○ | ○ | ○ |
戸籍謄本 | × | ○ | ○(郵送) | ○ |
※対面以外の入手方法については、一部地域でのみ対応している場合があります。
入手先の詳細については「【徳島市】書類の入手先 」で解説しています。
また、離婚協議書や財産分与契約書は弁護士など専門家に依頼をすることができます。
主な相談先については「【徳島市版】無料で相談できる場所 」で解説しています。
4-1.登記原因証明情報
登記原因証明情報とは、不動産の売買や相続など、登記の際に必要となる書類です。
『不動産登記法』では下記の通り定められています。
不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)
(登記原因証明情報の提供)
第六十一条 権利に関する登記を申請する場合には、申請人は、法令に別段の定めがある場合を除き、その申請情報と併せて登記原因を証する情報を提供しなければならない。
引用:e-GOV法令検索「不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)」
登記原因証明書を提出する方法には、大きく分けて下記の2種類があります。
- 既存文書活用型:既存の書類(売買契約書、抵当権設定契約書など)を提出する
- 報告形式:新たに作成した書類(新規の売買契約書、所有権の移転など)を提出する
実際に提出する際は、必要事項のみ記載できる「報告形式」での提出が一般的です。
登記原因証明情報は法務局で閲覧が可能です。
4-2.登記識別情報(登記済証)
登記識別情報とは、土地や建物の名義人ごとに定められ、登録された名義人にのみ通知される情報です。
名義変更をする際に使用します。
登記識別情報には、主に下記の内容が紐づいて記録されてされます。
登記識別情報に紐づいている内容
- 所在地・地番(土地の場合)、所在地・家屋番号(建物)
- 不動産番号
- 受付年月日 受付番号
- 登記の目的(抵当権設定、所有権移転など)
- 登録名義人の住所
- 登録名義人
登記識別情報を忘れても再発行はできません。
紛失した場合でも手続きは可能ですが、本人確認など、通常より時間を要します。
4-3.印鑑証明書(発行後3ヵ月以内のもの)
印鑑証明書とは、市区町村の役所に登録した印鑑と登録した人の情報が記載されている書類です。
必要書類に実印を押印する際、その印鑑が本人のものであることを証明できます。
印鑑証明書には、主に下記の内容が記載されます。
印鑑証明書に記載される内容
- 録した印鑑の印影
- 録した人の住所、氏名、旧氏、通称、生年月日
印鑑証明書に有効期限はありませんが、金融機関や不動産と契約書などを取り交わす際は、発行してから3ヵ月以内のものを提出するように求められることが多いです。
役所の窓口やオンライン申請、郵送での取り寄せ、コンビニのマルチコピー機での発行が可能です。
4-4.固定資産評価証明書(名義変更する年度のもの)
固定資産評価額証明書とは、土地や建物など固定資産の評価額を証明する書類です。
不動産の登記や相続税などの計算に必要になります。
固定資産評価額証明書には、主に下記の内容が記載されています。
固定資産評価額証明書に記載される内容
- 固定資産を所有する人の氏名
- 固定資産の所在地
- 土地:地積(面積)、地目、持分
- 建物:家屋番号、床面積、構造や規模、種類、(区分所有建物の場合)敷地権
- 固定資産税評価額:固定資産税を決める際の基準となる評価額
- 課税標準額:税率をかけて固定資産税額を算出する基になる金額
固定資産評価証明書は、対象の固定資産がある市区町村の窓口や郵送での取得が可能です。
取得の際は、本人、委任状のある代理人や相続人など、固定資産に関係のある人が申請を行います。
4-5.戸籍謄本(離婚後のもの)
戸籍謄本とは、戸籍に記載された全員の身分事項を証明する書類です。
不動産の相続登記の他、預貯金の相続手続きなどに用いられます。
離婚による財産分与の際には、離婚後の戸籍謄本を準備します。
戸籍謄本には、主に下記の内容が記載されます。
戸籍謄本に記載される内容
- 本籍
- 戸籍の筆頭者の氏名
- 戸籍に記載されている人全員の氏名
- 生年月日
- 身分事項(父母との関係、出生事項、婚姻事項など)
戸籍謄本は本人意外に配偶者や直系親族は、本籍地をはじめ全国の市区町村役所で戸籍謄本を取得できます。
離婚後でも、元夫の戸籍に除籍者として記載がされていれば受け取ることができます。
役所の窓口の他、郵送やコンビニのマルチコピー機でも取得できます。
ただし、離婚当日は取得することができません。
戸籍に反映されるまで数日~1週間程の時間を要します。反映にかかる時間は自治体によって異なるため、事前に問い合わせておきましょう。
5.【徳島市】書類の入手先・住所
徳島市で離婚による財産分与に必要な書類を入手できる場所を紹介します。
徳島地方法務局 本局
住所:〒770-8512
徳島県徳島市徳島町城内6番地6
徳島地方合同庁舎
電話番号:代表 088-622-4171(音声案内)
登記手続き 088-622-4683
営業時間:午前9時~午後5時
HP:https://houmukyoku.moj.go.jp/tokushima/table/shikyokutou/all/honkyoku.touki.html
徳島市役所
住所:〒770-8571
徳島県徳島市幸町2丁目5番地(本館7階)
電話番号:代表 088-621-5111
営業時間:午前8時30分~午後5時
HP:https://www.city.tokushima.tokushima.jp/smph/shisei/shiyakusho/index.html
6.【徳島市版】無料で相談できる場所
徳島市では財産分与について弁護士や司法書士など、専門家へ無料で相談できる「暮らしの相談」や「法テラス」といったサービスがあります。
暮らしの相談
所在地:〒770-8571 徳島県徳島市幸町2丁目5番地(本館1階)
市民生活相談課 市民相談担当
電話番号:088-621-5200・5129
HP:https://www.city.tokushima.tokushima.jp/smph/kurashi/soudan/soudan_kurashi.html
※弁護士への相談は事前予約が必要です。
法テラス徳島
所在地:〒770-0834 徳島市元町1丁目24番地 アミコビル3階
電話番号:0570-078394(受付時間:平日9時から17時)
HP:https://www.houterasu.or.jp/site/chihoujimusho-tokushima/
徳島弁護士会法律相談センター(徳島市)
所在地:徳島弁護士会法律相談センター(徳島市新蔵町1丁目31 徳島弁護士会館内)
電話番号:0570-078394(受付時間:平日9時から17時)
HP:https://tokuben.or.jp/counseling
※一部有料
※WEB上での予約も可能です。
7.【徳島市版】おすすめの士業
徳島市で離婚による財産分与について相談できる、おすすめの士業を紹介します。
おいさき法律事務所
所在地:〒770-0844
徳島県徳島市中通町1丁目19 島田ビル2階201号
電話番号:088-678-9003
営業時間:平日 9:00~17:00
HP:https://oisaki-law.com/
ベリーベスト法律事務所 徳島オフィス
所在地:〒770-0841
徳島県徳島市八百屋町2丁目7番地 徳島センタービル5階
電話番号:0120-152-069(受付時間:平日9:30〜21:00 / 土日祝9:30〜18:00)
営業時間:平日 10:00~18:00
HP:https://tokushima.vbest.jp/
小笠原合同事務所
所在地:〒770-0905
徳島県徳島市東大工町1丁目19番地
お問い合わせ ::0120-130-995
電話/FAX :088-635-1558/088-635-0204
営業時間 ::【平日】9:00~18:00 【土曜】9:00~17:00 (日曜・祝日休)
HP:https://ogasawara-jsoffice.com/